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1か月の平均所定労働時間の算出方法についてまとめてみました

労働

最低賃金や時間外手当を計算するときに、よく出てくるものに「1か月の平均所定労働時間」というのがあります。この間2回に分けて、この「1か月の平均所定労働時間」の算出方法についての記事を掲載してきましたが、今回この記事を一つに整理して、まとめてみましたので一読いただけると幸いです。

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1か月の平均所定労働時間算出の必要性

最低賃金や時間外手当を計算する時に必要なのは、その人の時給単価をもとに計算します。従いまして、もともと時給の人は、その時給で計算すればよいし、日給の人は1日の所定労働時間で割れば時給がわかります。

ところが、月給の場合は、月によって勤務日数が違ってくることがほとんどなので、どうしたらよいか迷うところですが、労働基準法の施行規則によりますと次のように定められております。

労働基準法施行規則では、「月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一月平均労働時間数)で除した金額」となっております。

1か月の平均所定労働時間の算出式

つまり、月によって勤務日数が違っている場合は、上記施行規則中の括弧の中の「月によって所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一月平均労働時間数」を計算すればよいわけです。

したがって、1か月の平均所定労働時間の算出式は、次のとおりとなります。

1年間の所定労働日数×1日の所定労働時間数÷12

つまり、一年間の所定総労働時間数を求めて、それを12か月で割ればよいわけです。具体的には、1年間の所定労働日数や1日の所定労働時間数は就業規則で定められていますので、それをもとに算出すればよいわけです。

実際の計算例

<1>1日の所定労働時間と休日が就業規則等で次のように定まっている会社を例にとり、1か月の平均所定労働時間を算出してみましょう。

  • 1日の所定労働時間 7.5時間
  • 所定休日
  1. 毎週土曜日及び毎週日曜日
  2. 国民の祝日に関する法律に定める休日
  3. 8月13日から8月15日まで
  4. 12月30日から翌年1月4日まで

<2>まず、2022年1月1日から2022年12月31日を例にとり、1年間の所定労働日数を算出します。

すると、1年間の所定労働日数は次のようになります。

1年間の所定労働日数=365ー年間所定休日数=365ー(13+10+9+10+12+8+11+10+10+11+10+10)=365−124=241

<3>よって、1か月の平均所定労働時間は次のようになります。

241日×7.5時間÷12か月≒150.62(端数処理については、後で述べます、以下、他の場合についても同じです)

<4>なお、年間所定休日数は土曜日が祝日になったり、お盆や年末年始の休日が土曜日、日曜日と重なったりして変動することがありますので、毎年チエックすることが必要です。

<5>1年間の所定労働日数や1日の所定労働時間数がきちんと就業規則等で定まっているところは、このようにして1か月の平均所定労働時間については算出すればよいのです。

一人一人違うあるいは変動したりする場合

ところが、1か月変形労働時間制を採用しているところで、1年間の所定労働日数や1日の所定労働時間数が一人一人違うあるいは変動したりする場合を時々見かけるときがあります。では、その場合はどうすればよいでしょうか。

そのような場合は、労働基準法上の上限時間を求めて1か月の平均所定労働時間を計算するしかないのかなと考えております。そこで、そのような1か月変形労働時間制の場合の計算例を示しておきます。

1か月変形労働時間制の場合

<1>まず、31日の月、30日の月、28日の月のそれぞれ上限時間を計算します。

  • 31日の月 40時間×31÷7≒177.14時間
  • 30日の月 40時間×30÷7≒171.42時間
  • 28日の月 40時間×28÷7=160.00時間

<2>次に、一年間の総労働時間の上限を計算します。

  • 177.14時間×7か月+171.42時間×4か月+160時間×1か月=1239.98時間+685.68時間+160時間=2085.66時間

<3>そして、1か月の平均所定労働時間を計算します。

  • 2085.66時間÷12か月≒173.80時間

<4>閏年の場合は、28日を29日に置き換えて計算し直してみて、皆さんもやってみてください。

時間の端数処理について

  • 労働基準法上、割増賃金の計算では、1時間あたりの賃金額や割増賃金額に円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げ、また、平均賃金の計算では、賃金の総額を総暦日数で除した金額の銭未満の端数を切り捨て、平均賃金を基にして休業手当等を計算する場合は、特約がなければ円未満の端数処理は、割増賃金の計算と同様に50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げることになっております。
  • このようにいわゆる「お金」の端数処理については定められており、基発(労働基準局長名で発する通達)や厚生労働省などのHPでも確認できますが、「時間」についての端数処理については、確認することができませんでした。そこで、今回解説した1か月の平均所定労働時間を計算する場合では、どうしたかというと厚生労働省のパンフレットや就業規則に関する書籍、平均賃金の計算などを参考にして、小数点3桁を切り捨てて、小数点2桁までを採用しております。
  • なお、現実の実務では、前にも述べたように、端数処理については労働者に有利に働くような処理、つまり、1か月の平均所定労働時間としては150.62時間や173.80時間ではなく、ほとんどが150時間や173時間で助言、指導しております。

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