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医師の働き方改革と宿日直許可についての解説記事です。今回は、「宿日直許可の実践編」です。

労働

医師の働き方改革の問題で、この間、宿日直許可をとる背景事情や宿日直許可をとった場合の法的効果、宿日直許可の要件等について解説してきましたが、今回は、私が実際に関与して許可が取れた病院の「宿日直許可の実践編」です。

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宿日直許可の要件の私なりの整理

医師の宿日直の許可の要件は、私なりにまとめると次の5つぐらいに集約されると考えています。

  1. 常態としてほとんど労働することがないこと
  2. 通常の労働の継続ではないこと
  3. 宿日直手当額が同種の業務に従事する労働者の1人1日平均額の3分の1以上であること
  4. 宿日直の回数が、原則として宿直は週1回、日直は月1回以内であること
  5. 宿直について相当の睡眠設備を設置していること

なお、詳しい許可の要件については、下記の私の過去記事を参照してみてください。

宿日直許可までの流れなど

決定までの全体の流れ

  1. 監督署への事前相談
  2. 許可申請書及び添付書類の作成
  3. 許可申請書を監督署へ提出
  4. 監督署からのヒアリング、現地調査
  5. 補充ヒアリングや追加書類の提出
  6. 許可もしくは不許可の決定

決定までの期間

申請書を監督署に提出してから、2週間程度で許可が下りることが多いようですが、これはいわゆる「寝当直」と呼ばれるように救急車や急患の発生がない病院の場合には、早く決定が出るようです。

2次救急病院

しかしながら、以下、事例として紹介する病院は、2次救急病院のため、救急車搬入の数がそれなりにあるため、上記の許可要件中の「常態としてほとんど労働することがない」かどうか慎重に確認していたこともあってか、許可申請から許可が出るまで80日ぐらいかかりました。

事例病院の概要と適用状況

事例の病院概要

今回の取り上げる事例の病院概要は、以下のようなものでした。

  • 一般病院(内科、外科、小児科)
  • 病床数 124床、2次救急病院
  • 職員 270人、うち 医師27人

当該病院の適用状況

私なりに整理した上記の許可条件5つのうち、2の「通常の労働の継続ではないこと」、3の「宿日直手当額が同種の業務に従事する労働者の1人1日平均額の3分の1以上であること」、5の「宿直について相当の睡眠設備を設置していること」については、全く問題はありませんでした。

4の「宿日直の回数が、原則として宿直は週1回、日直は月1回以内であること」については、当時、宿直を行っている医師が6人しかいないため、宿直を週2回ないといけない日が出てくる状況にあ離ましたが、許可申請の際に理由書を提出し、また今後の見込み等について記述したので、過去の許可事例から見て考慮される可能性はあると考えていました。

従って、当該病院で宿日直の許可を得るための最大の課題は、上記許可条件1の「常態としてほとんど労働することがないこと」にありましたし、実際の監督官からの意見聴取についても、ほとんどがこの部分に集中しました。

 

常態としてほとんど労働することがないこと

この病院における「常態としてほとんど労働することがないこと」の確認方法については、許可申請書添付の「勤務実態報告書」をもとに医師への勤務実態等の直接確認、急変対応、重症者対応等の時間、救急車の台数や自宅待機医師の呼び出し回数などの追加資料で行われたました。 

そして、前回紹介した「医療機関の皆様へ(宿日直許可制度の御紹介)」の中の「医療機関における宿日直の事例」、特に「労基署の調査概要」を注意深く読み進めたところ、監督署は、どのような点を調査しているかがよくわかります。

私の個人的な判断ではありますが、「宿日直中に発生する通常の勤務時間と同態様の業務」がどれくらいの頻度、時間を要しているかを調査し、これらが「常態としてほとんど労働することがない」状態だと判断すれば、「許可」を出しているのではないかということです。

https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/20210720_02.pdf

結果は許可でした

今回の事例も上記のような点を調査した結果、「許可」という判断がされたと思いますが、ひょっとしたら2024年からの始まる「働き方改革」に対する監督署や厚生労働省の最近の対応や医師会等からの働きかけ、地域の状況などの様々な要因が重なって許可へとなったのかもしれません。

いずれにしても今後、医師の働き方改革への取り組みと相まって、この「宿日直許可」についてのニーズは高まって行くことは間違いありません。そして、解説記事では触れることもできなかった部分もありますが、今回、2次救急病院でも許可は取れるということに確信がもてたことは、大きな喜びでもあります。

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